殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安(一)
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発行者による作品情報
品川台町に住む鍼医師・藤枝梅安。表の顔は名医だが、その実、金次第で「世の中に生かしておいては、ためにならぬやつ」を闇から闇へ葬る仕掛人であった。冷酷な仕掛人でありながらも、人間味溢れる梅安と相棒の彦次郎の活躍を痛快に描く。「鬼平犯科帳」「剣客商売」と並び称される傑作シリーズ第1弾。
APPLE BOOKSのレビュー
時代小説の大家である池波正太郎の代表作であり、過去何度もドラマ化、映画化され、テレビの『必殺』シリーズの原点ともなった人気シリーズの第1作。主人公の藤枝梅安は、表では人気の鍼医師として人々に信頼されながら、裏では世のためにならない悪人殺しを金で請け負う仕掛人と呼ばれる殺し屋だった。同じ作者による人気シリーズ『鬼平犯科帳』や『剣客商売』と比べると、主人公は正義の役人でもなく、人情家でもない。ただ寡黙に仕掛けを実行する冷徹な殺し屋という姿は、池波作品きってのダークヒーローといえるだろう。しかし、表裏一体の二面性を持つ梅安は、世間は善でも悪でもないという現実をそのまま具現化した存在とも見て取れる。江戸の町の詳細な描写と、おいしそうな料理の数々は池波ファンにはおなじみで、改めて江戸の風情をのぞき見するのに最適だ。作者の逝去によりシリーズ未完となったが、一話ごとに完結しているともいえ、どこから読んでも仕掛人の世界に入ることができる。