汚れた手をそこで拭かない
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発行者による作品情報
もうやめて……ミステリはここまで進化した!
第164回直木賞候補作。
ひたひたと忍び寄る恐怖。
ぬるりと変容する日常。
話題沸騰の「最恐」ミステリ、待望の文庫化。
閉鎖空間に監禁された
デスゲームの参加者のような切迫感。──彩瀬まる
平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家……。きっかけはほんの些細な秘密だった。
保身や油断、猜疑心や傲慢。
内部から毒に蝕まれ、
気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。
凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。
解説=彩瀬まる
※この電子書籍は2020年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
ちょっとしたその場の判断が取り返しのつかない結末につながっていく様をスリリングに描いたサスペンス短編集。プールの排水バルブを閉め忘れた教員が言い訳を捻出しようとする「埋め合わせ」。主演俳優の薬物使用を疑う映画監督がなんとか映画公開にこぎつけようと画策する「お蔵入り」。売れっ子の料理ブロガーに以前の不倫相手が金をせびりにくる「ミモザ」。いつかどこかで聞いたような…と思わせるリアルな設定が興味をそそる。窮地に追い込まれた人がとっさにする判断は愚かに思えるが、自分がもしその立場に置かれたら同じことはしないと言い切れる人は少ないのではないだろうか。それくらいなら手を出してしまいそうだと思わされる小さなうそやごまかしをきっかけに、どんどん悪い状況に追い込まれていく主人公の心情には思わず共感してしまう。主人公がかすかな違和感を覚えた時はもう遅く、崩壊は静かに足元から始まっている。その不穏な描写にぞくぞくさせられる。