演歌の虫
-
-
1.5 • 2件の評価
-
-
- ¥440
-
- ¥440
発行者による作品情報
演歌歌手を育てて世に出すことに情熱を燃やすレコード会社のディレクターの夢と挫折を、冷めているようで暖かい女性作詞家の眼で描く「演歌の虫」、毎日美しく髪を結っては旦那が訪ねて来るのを待ち続ける老芸妓の心境を淡々と描く「老梅」の第93回直木賞受賞作2作のほか、だめな男に金を貢ぐのをやめられない女の心理をおそろしいほど正確に描く小説「貢ぐ女」、プロ野球選手とポルノ女優のしがらみを生々しく描く「弥次郎兵衛」を収録した著者会心の短篇集。
APPLE BOOKSのレビュー
第93回(1985年上半期)直木賞受賞作。女性の作詞家の目を通し、演歌歌手の育成に情熱を燃やすディレクターの夢と挫折を描く『演歌の虫』と、愛する人をただ待ち続ける老芸妓を描く純愛小説『老梅』が同時受賞。表題作では、「よこはま・たそがれ」や「ブランデーグラス」など、実際に昭和歌謡の名曲を数多く生み出してきた作詞家でもあった著者の実体験かと見紛うほどに芸能界の裏事情がつづられる。また、銀座のクラブの経営者でもあった著者だけに、鋭い人間観察に裏打ちされた登場人物の描き方が深く、モデルがいるのではないかという好奇心をも刺激されるだろう。スキャンダラスで赤裸々で、それでいて純情な、まるでテイストの違う4編が収録された短編集。どの作品もモダンな文体とテンポの良さに引き込まれるが、その根底には演歌らしい哀愁や情念が流れているようだ。