「真」犯人
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発行者による作品情報
これ、だれが殺ったことにする?
芸術村存続のために練り上げた殺人のストーリーは、
成立間近で、思わぬ事態に――!?
芸術家の卵たちが巻き起こす、魅惑の冤罪ミステリー!
「仕方がない。犯人になってもらおう」
アーティストを支援する山あいの芸術村に、九人の芸術家の卵と一人の居候、そして四人のスタッフが暮らしていた。
ニックネームで呼び合うこの村で、ある日、スタッフのわたしは、発明家エジソンさんの死体を発見。殺したのは恋人で歌人の小町さんのようだが、彼女を犯人にしたくない村長さんは、わたしに、CGアーティストの写楽さんを「真」犯人にするよう指示する。
無茶苦茶な要求に戸惑うわたしだったが、いつしか冤罪作りに夢中になって……。
APPLE BOOKSのレビュー
芸術村という特殊な環境で繰り広げられる「冤罪」ミステリー。投資で巨万の富を稼いだ村長さんが廃校を買い取り、見どころはあるけれど芽の出ない芸術家を支援する場所として作った芸術村。ニックネームで呼び合うこの村で、9人の芸術家の卵たちと4人のスタッフ、1人の居候が和気あいあいと過ごしていたが、ある日スタッフである「わたし」が宅配便の荷物を発明家のエジソンさんの部屋に届けたところから事件が始まる。鍵の開いていたエジソンさんの部屋でわたしが見たのは血の海に横たわるエジソンさんと彼の恋人であり歌人の小町さん。当然警察に通報すべき事件だが、小町さんが恋人を殺害した後、自殺を試みたと考えたスタッフ一同は、芸術村初の成功者に近い彼女を警察に逮捕させたくないという村長さんの希望を酌み、罪のない村民の写楽さんを「真」犯人とすべく奮闘を始める。ところがあらゆる方向から検討を重ねた捏造(ねつぞう)ストーリーは成立まであと一歩のところで思わぬ事態に。芸術のためならば殺人など些細なこととばかりに、倫理観を置き去りにしたまま話は進んでいく。常軌を逸した人々の中で、事件のストーリーを作ることが「わたし」の成長につながっている一面もあり、その一抹の明るさにほっとさせられる。