私はチクワに殺されます
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3.3 • 3件の評価
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- ¥700
発行者による作品情報
チクワの穴を通して人の姿を見ると、その人物の死に様が見える――。巷に溢れるチクワの秘めたる怖ろしい力に気付いたトラック運転手の男は、己だけが知る事実の重さに苛まれ、やがて身を滅ぼしていく。荒唐無稽な設定から始まる奇妙な物語は、複数の視点から語られることで全く異なる側面を見せる。予想不可能な結末が待ち受ける、前代未聞・驚天動地のチクワ・サスペンスここに開幕!
APPLE BOOKSのレビュー
ちくわの穴をのぞくと、その人の死にざまが見えるという奇想天外なサスペンス『私はチクワに殺されます』。練馬区郊外の借家で50代の夫婦が無残な姿で死亡していた。遺体の周りには恐ろしい数のちくわが散乱。「私はチクワに殺されます」という冒頭から始まる夫の手記に書かれていたのは、ちくわによってたくさんの人間が死んだという荒唐無稽な話。1章は死んだ男の「手記」、2章は死んだ夫婦の娘の「インタビュー」、3章では事件を取材していたフリーライターの「小説の断片」。章ごとに視点が変わることによって、一連のちくわ事件がまったく違う話として見えるのが興味深い。3章を通して、事の全貌が少しずつ見えてくると驚くべき結末が待っている。ちくわという、ありふれた食材に対してここまでイマジネーションをふくらませた結果、世にも奇妙な小説となることに感動すら覚える。のぞいてはいけないと言われるとのぞいてしまう人間のさがをうまく表現していることから、読後に思わずちくわの穴をのぞいてしまう読者も少なくないだろう。