貧しき人々
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発行者による作品情報
ドストエフスキー翻訳の金字塔!
(この本について)
文豪ドストエフスキーの若き日のデビュー作。
この作品がどれほどの衝撃を当時の文壇に与えたかは以下の文に詳しい。
……グリゴローヴィチが、ドストエフスキーより一歩先んじて文壇にデビューしていたので、詩人であると同時に事務的才能をもって知られたネクラーソフのもとに、親友の原稿を携えて行った。ネクラーソフは、「十ページばかり読んでみたら、どんなものか見当がつくだろう」といったような気軽な心持ちで、グリゴローヴィチといっしょに読み始めた。しかし、最初の十ページが読み終えられると、さらに次の十ページが読まれ、ついに二人は一気に最後まで読了したのである。ポクローフスキー老人がわが子の棺を追って走るくだりまで来た時、ネクラーソフは思わず平手で原稿をとんと叩いて、「ええっ、この作者はなんて男だろう!」と叫んだ。二人が原稿を読み終わったのは、もはや夜明けの三時頃であったが、彼らは興奮と感激を抑えることができないで、これからすぐ作者ドストエフスキーを訪れようと相談一決した。「なに、寝てたってかまやしない、叩き起こしてやろうじゃないか。これは睡眠以上のものだ」
その晩ドストエフスキーは、ある一人の友を訪問して、その頃の青年たちの例にもれず、今まで幾度となく読み返したゴーゴリの『死せる魂』を、またもや二人でかわるがわる読み合った。そして、家へ帰って来たのはもう朝の四時であった。折しも時は五月、昼のように明るいペテルブルグの白夜で、ドストエフスキーは眠れぬままに開け放した窓辺に座って、そこはかとなきもの思いに耽っていた。その時べルがけたたましく鳴った。ドアを開けると、思いがけないグリゴーロヴィチがネクラーソフとともに飛び込んできて、目に涙を浮かべながら彼を抱擁したのである。
その日、ネクラーソフはこの原稿を持って、当時のロシヤ文学の命令者であった批評家べリンスキイを訪れた。彼は入るといきなり、「新しいゴーゴリが出現した!」と叫んだ。べリンスキイはそれに対して、「きみたちにいわせれば、ゴーゴリが雨後のたけのこのように出てくるんだからね」と厳しい調子でこたえたが、原稿を通読したとき、「つれて来てくれたまえ、この作者を早くつれて来てくれたまえ」といった。やがてドストエフスキーが来訪した時、彼は感動を包みかねた様子で、「きみは自分でも自分の書いた本がどんなものかわからないでしょう。そりゃ二十そこそこのきみにはわかるはずがない……しかし、きみは芸術家として真理を啓示したのだ、真理が天賦として与えられたのだ。きみはこの天賦を大切にしてこれに忠実であったなら、やがて偉大な芸術家となるでしょう!」と言った。
(米川正夫の解説より)
(古典教養文庫について)
古典教養文庫は、日本のみならず広く世界の古典を、電子書籍という形で広めようと言うプロジェクトです。以下のような特長があります。
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