超える‪力‬

ハンマー投げや人生観について

　自身の経験や恩師、室伏選手に携わった人々からの助言や異なる人生観から得た理解を俯瞰、再構築し選手人生や研究者としてのセカンドキャリアの質や色味を深めていった旨の内容が書かれている。しかし彼が持つ(遺伝的なものを含めた)肉体的才能(筋肉の質や体格)は一般の日本人の肉体レベルとは比較にならないほどかけ離れており、あまり読み手の為になる内容ではないと強く感じた。また独創的なトレーニングの考案に関しても発想の柔軟性の素晴しさには驚くが彼の場合は既存の運動ではパフォーマンスの向上が頭打ちでもあったからこそ、その様な取組みが必要だと考えた末なのだろうと読みながら感じた。思考の柔軟性について話していたのかも知れないが、あまり具体的に読み手に還元する物があるとは思えない。
　本書の最後には恩師、上司から室伏広治さんの人格に関する記述が印象に残ったが、あまりにも社会が描く”The 良い人”過ぎて私は魅力を感じなかった。この本の中でも名前が出ているが元やり投げ選手の溝口和洋選手の著書の方が人間味や味があり強く惹かれる。