軍旗はためく下に 増補新版
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発行者による作品情報
歴代直木賞受賞作中の白眉である(浅田次郎『コレクション戦争と文学11 軍隊と人間』解説より)
敵前逃亡・奔敵、従軍免脱、司令官逃避、敵前党与逃亡、上官殺害。陸軍刑法上、死刑と定められた罪により、戦地で裁かれ処刑された兵士たち。戦争の理不尽を描いた直木賞受賞作に著者の自作再読エッセイを収録した増補版。
〈解説〉五味川純平
〈巻末エッセイ〉川村湊
APPLE BOOKSのレビュー
第63回(1970年上半期)直木賞受賞作。ミステリーやハードボイルドの先駆者として知られる著者が、戦時における軍隊の裏側を描き、後に映画化もされた骨太な戦場哀史。「敵前逃亡」や「上官殺害」など、軍法会議で死刑となる重罪を犯した人々の真の姿を追った五つの短編で構成。終戦から20数年後「回顧録を作るためにかつての軍人たちに話を聞く」という形で物語が進むため、まるでノンフィクションを読んでいるかのような錯覚に陥る。描かれるのは軍隊という暴力装置で繰り返される理不尽な日常。司令部の無策、上官の横暴、極限状況に置かれる最前線の兵士たち。立場が違えば語る内容も変わり、それが一層真実を覆い隠し、人間性を失わせていく。フィクションとはしているが、戦史をひもとけば思い当たる事例も浮かび、世界のいかなる戦場でも起こっていることのようでもある。21世紀を迎えても争いが繰り返される現代において、戦争がもたらす悲劇を知る上で、読み継いでいかなければならない作品。