P+D BOOKS 志ん生一代 (上)
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- ¥470
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発行者による作品情報
名人・古今亭志ん生の若き日の彷徨を描く。
15歳で家出し、20歳で三遊亭小円朝に弟子入りし、朝太の名をもらう。
「一人前の噺家になるまでは家にはかえらねぇ……」。
落語への情熱は本物だったが、10代から覚えた「飲む、打つ、買う」の3道楽は止められない。師匠を怒らせ、仕事をしくじり、借金を重ねていく……。後の名人・古今亭志ん生の若き日の彷徨だった。
上巻では不世出の天才落語家・志ん生の若き日が、生き生きと描かれる。
「ハードボイルド小説の先駆者」といわれた結城昌治の、また別の顔が垣間見られる力作長編。
APPLE BOOKSのレビュー
昭和を代表するミステリー作家である結城昌治が、同じく昭和を代表する落語家・5代目古今亭志ん生の生涯を描いた一代記。三遊亭朝太から志ん生の名跡を継ぐまで、じつに16回も名を変えた本名・美濃部幸蔵。酒に溺れ、博打にのめり込み、女房を放って女遊びに興じる姿は、破滅的な芸人のイメージそのまま。無銭飲食で捕まり、留置場でバナナ欲しさに落語を披露したり、真打昇進であつらえてもらった羽織を質に入れて飲んでしまったりと、次から次へと出てくる驚愕のエピソードの数々は、小説という形をとりながらもすべて実話。まるで落語演目から抜け出したかのように、滑稽噺や人情噺が展開されていく。何度も破門され、師匠を変え、どん底の生活に落ちながらも、芸の道だけは捨てられずに足掻く若き日の志ん生の姿は、青春小説のように泥臭くて清々しい。そして、志ん生をとりまく人々の姿は、大正から昭和に入って戦後を迎えるまでの激動の時代を生きた庶民の日本近代史ともいえる。