類似と思考 改訂版
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4.0 • 1件の評価
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発行者による作品情報
判断は類推に支えられる。心はどのようなメカニズムを持つのか。“われわれの認知活動を支えるのは、規則やルールではなく、類似を用いた思考=類推である”。本書は、この一見常識に反する主張を展開したものだ。類推とは、既知の事柄を未知の事柄へ当てはめてみることと考えられている。だが、それだけでは実態に届かない。その二項を包摂するもうひとつの項との関係の中で動的に捉えなければならない。ここに、人間の心理現象に即した新しい理論が提唱される《準抽象化理論》。知識の獲得や発見、仮説の生成、物事の再吟味にも大きな力を発揮する類推とは何か。心の働きの面白さへと誘う認知科学の成果。
カスタマーレビュー
「類推」に焦点を当てた認知理論
「類推」は演繹や帰納などの論理形式の1つであり,我々の思考を規定しているものとされている。
本書は,それらの既存の論理形式による人間の思考方法の解釈に疑義を呈す。前件肯定式に代表される古典論理からプロトタイプ理論,概念間の類似度を量る多次元尺度解析,対比モデル,既存の認知科学の知見に含まれる問題点を踏まえ,類推機能を解釈する多重制約理論や構造写像理論,概念メタファー説,p-prim理論,漸進的写像理論,Copycatなどの最近の研究事例を紹介する。
著者の提唱する準抽象化理論はこれらの理論と部分的に共通しており,統一的な類推機能の解釈を期待できる。
また準抽象化理論によれば,ベース(過去の事象)とターゲット(未知の事象)を内包する準抽象化されたカテゴリーを生成し,写像を行うことにより,人間は過去の事例を未知の事象への推測として用い類推を行うようだ。
本書では,同内容の事柄が再三述べられているため大変読みやすい。ただし実験内容の紹介部分では,その説明に図が用いられていない場合が多く,理解しづらい。また,付録の理論の詳説は特に有用である。