ウサギの天使が呼んでいる
ほしがり探偵ユリオ
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- ¥670
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発行者による作品情報
上司とのトラブルで会社を辞めた深町さくら。彼女は再就職をするまで、兄・ユリオの家に転がり込み、ショッピングサイト《ほしがり堂》を経営する彼の仕事を手伝うことに。節操なく色々なモノをほしがり、方々から集めたガラクタ(お宝)をほしい人に売るユリオ。そんな彼がほしがるモノをゲットしに行くと、なぜか決まって事件に巻き込まれてしまう! 身元不明のゾンビの死体の謎、ゴミ屋敷に隠された秘密など、ほしがりの兄と苦労人の妹がお宝をめぐる数々の事件に挑む。〈浜村渚の計算ノート〉シリーズの著者が描くポップな連作ミステリ。
APPLE BOOKSのレビュー
軽快なタッチの中に人情をにじませたミステリーを描く青柳碧人のオムニバス形式の探偵小説「ウサギの天使が呼んでいる」。ヒロインの深町さくらは、正義感の強さから勤務先の上司に反発し半年で退社、兄であるユリオの部屋で同居することになる。奇妙なものにばかり興味を持ち、さくらにとってはガラクタとしか思えないものを集めては、自身がオーナーのインターネットショップで売る兄。このちょっとした変わり者のユリオが、鋭い洞察力と行動力を発揮して、出掛けた先で遭遇する事件を次々と解決していく。さくらはあきれながらも彼の深い知識に尊敬の想いを抱いており、時に意外な観察力で相棒役を務めるので、探偵バディものとしても楽しめる。全員がゾンビに扮する居酒屋のパーティーや顔ハメ看板のコレクターの家など、事件が起こる場所も意表を突いていて面白い。小気味よく推理していくにもかかわらず、飄々としたユリオの描き方も洒脱で愉快。また、事件解決後に明らかになる犯人と、彼らを取り巻く人たちの心模様にも共感できる穏やかな読後感も魅力。