グロテスク 上
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- ¥750
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発行者による作品情報
光り輝く、夜のあたしを見てくれ!
女たちの孤独な闘いを描いた最高傑作。
名門Q女子高に渦巻く女子高生たちの悪意と欺瞞。
「ここは嫌らしいほどの階級社会なのよ」
悪魔的な美貌を持つニンフォマニアのユリコ、競争心をむき出しにし、孤立する途中入学組の和恵。
ユリコの姉である“わたし”は二人を激しく憎み、陥れようとする。
圧倒的な筆致で現代女性の生を描き切った、桐野文学の金字塔。
解説・斎藤美奈子
※この電子書籍は2003年6月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
1997年に起きた「東電OL事件」をモチーフに、女たちの激しい生存競争、男たちとの戦い、抑圧され迷走し、やがて結晶化していく悪意と承認欲求を描いた桐野夏生の代表作。スイス人の父と日本人の母の元に生まれた地味な“わたし”は、驚異的な美貌を持つ妹のユリコと常に比較され、暗い陰の面を歩いてきた。ユリコを憎むあまり、彼女から離れるための一計を案じた“わたし”は名門Q女子校に入学する。そこでは選民意識の塊のような初等部上がりの内部生がヒエラルキーのトップを占め、“わたし”のような外部生は見向きもされない存在だった。ところがその悪意に満ちた階級社会にユリコが転入してきたことで、生徒たち全体を大きく狂わせていく。ユリコと比較されることで一段と立場が損なわれた“わたし”は、ユリコだけではなく、空気の読めない外部生として嘲笑の対象であった和恵に対する悪意をも膨らませていく。頭脳や悪意の“怪物”とならなくては生存できない逃げ場のない世界。そしてその能力にかかわらず、常に美醜が問われるという、女たちの普遍的な痛みに深く切り込んでいく。全編を通じて“グロテスク”という言葉が指し示すものは何か、深く考えさせられる。