魔女の原罪
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発行者による作品情報
変死事件で暴かれる町の秘密
法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体。
一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび上がる。
僕(宏哉)と杏梨は、週に3回クリニックで人工透析治療を受けなければならない。そうしないと生命を維持できないからだ。ベッドを並べて透析を受ける時間は暇で、ぼくらは学校の噂話をして時間を潰す。
僕らの通う鏡沢高校には校則がない。ただし、入学式のときに生徒手帳とともに分厚い六法を受け取る。校内のいたるところには監視カメラが設置されてもいる。
髪色も服装も自由だし、タピオカミルクティーを持ち込んだって誰にも何も言われない。すべてが個人の自由だけれども、“法律”だけは犯してはいけないのだ。
一見奇妙に見えるかもしれないが、僕らにとってはいたって普通のことだ。しかし、ある変死事件をきっかけに、鏡沢高校、そして僕らが住む街の秘密が暴かれていく――。
『法廷遊戯』が映画化され注目を集める現役弁護士作家の特殊設定リーガルミステリー。
APPLE BOOKSのレビュー
現役の弁護士というバックボーンを生かしたリーガル作品で知られる五十嵐律人の特殊設定ミステリー。高校生の和泉宏哉は、透析治療を受けながら地元の高校に通っている。その高校には校則がなく、校訓は「自由闊達」というだけあり、髪型だろうが服装だろうが法律に反してさえいなければ何をしても自由だ。つまりこの学校での不祥事とは、犯罪行為を指す。そして不祥事を起こした者は犯した罪と実名を全校生徒の前で公表されるのだ。夏休み明けの始業式で明かされた在校生による窃盗事件とそれによって起こる“適法な”いじめ。法律だけを重んじる高校のルールに違和感を覚えた宏哉は、いじめを何とかしようと動くが、逆に無視されるようになる。そんな時、透析仲間でもある友人の杏梨が行方不明になってしまう。一つのありふれた事件をきっかけに、さびれたニュータウンに広がるさざなみのような変化。街の開発当初から住む人々と移住者たちとの対立。透析や豚の血を使った料理など、繰り返される“血”の暗示。登場人物の口から度々語られる“魔女”という単語。青春小説のように始まった物語の先の読めない不穏な展開と張り巡らされた伏線にぐいぐい引き込まれてしまう。