奔流の海
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- ¥950
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発行者による作品情報
人は運命に抗うことができるか?
1968年、後に「千里見の七夕崩れ」とよばれる大型台風による土砂崩れで、町は多数の死者・行方不明者を出した。
20年後、同じ町の旅館の娘・清田千遥は、東京からやってきた大学生・坂井裕二と出会う。裕二はなぜか夜ごと町を徘徊していた――
激流に飲まれた運命がやがて大きな感動へとたどり着く。
『代償』『悪寒』のベストセラー作家・伊岡瞬史上、
最も残酷で美しい青春ミステリー!
Apple Books Store 2022年上半期ベストブック(ミステリー部門)
※この電子書籍は2022年1月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
APPLE BOOKSのレビュー
2022年ベストブック:ミステリー - 共感も同情もあざ笑う極悪人に翻弄される犯罪サスペンス『代償』で、人気ミステリー作家の仲間入りをした伊岡瞬。その後も『悪寒』『本章』など、ジェットコースターのように悪夢が続くハード路線で怖いもの見たさの読者を獲得してきた。青春ミステリー『奔流の海』では児童虐待という悪夢が描かれるが、今作ではその表現はマイルドに。1968年7月、東海道の難所と呼ばれる地域で、豪雨による大規模土砂災害が発生する。伊岡の筆が描く自然災害の前触れは不穏な空気と焦燥感に満ち、危機迫る現場に読者の意識を引きずり込んでゆく。それから20年後、父の突然の死から立ち直れない母を支えるために、大学を休学して海辺の町に留まる千遥(ちはる)。父親に当たり屋をさせられ貧困と不幸にまみれた子ども時代を過ごしてきた大学生の裕二。バブル時代の華やかさに置き去りにされた不運な2人は、千遥の実家である旅館で出会う。各章でバラバラに進行する時間軸に惑わされるが、それは本作の謎解きの魅力でもある。すべてを水に流し、温かな炎がともるエピローグは、初めて伊岡作品に触れる読者も優しく包み込むだろう。