Invention and Innovation 歴史に学ぶ「未来」のつくり‪方‬

APPLE BOOKSのレビュー

エネルギー、環境、人口、食糧、技術革新史、リスク評価、公共政策といった領域で学際的研究に取り組み、“知の巨人”とも称されるカナダ人研究者の著作。インベンションとイノベーションを軸に、多くの事例を挙げながら適切な捉え方を得るための提言を行う。インベンションは「発明」、イノベーションはカタカナ表記で使われることも多いがあえて訳すなら「技術革新」という日本語で表されることが多い。簡潔に言うとゼロから何かを生み出すのがインベンション、さまざまな工夫を加えて改善するのがイノベーションということになる。ここでは原書の副題に“A Brief History of Hype and Failure”とあるように、期待を裏切った発明やいまだに実現していない発明、適切な技術革新が伴わなかった発明、それにまつわる根拠が希薄な楽観主義や誇大なうたい文句など、過去のさまざまな事例が時代背景を交えて事細かに取り上げられる。そしてそこから導き出される知見や、現在につながる教訓を数多く示す。本書は発明や技術革新と正しく向き合いながら、未来を見据えるための多角的かつ論理的な視座を読者に提供する。さらには、より幅広い領域で歴史から何かを学ぶときに応用できるスタンスを示す機能も果たしているといえるだろう。