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- ¥2,200
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発行者による作品情報
圧倒的な「いま」を描く、著者史上最大巨編!
千葉県富津市の清掃会社に勤める町谷亜八(ハチ)は、過去に傷害事件を起こし執行猶予中の身だ。ようやく手に入れた「まっとうな暮らし」からはみ出さぬよう生きている。唯一の愉しみは、祖父の遺したアウディでアクアラインを走ることだった。ある日、血の繋がらない姉・ロクから数年ぶりに連絡が入る。二人の弟、キュウを脅す人物が現れたというのだ。
キュウにはダンスの天賦の才があった。彼の未来を守るため、ハチとロクは、かつてある罪を犯していた。折しも、華々しいデビューを飾り、キュウは一気に注目を集め始めたところである。事件が明るみに出ればスキャンダルは避けられない。弟のため、ハチは平穏な日々から一歩を踏み出す。
一方、キュウをプロデュースする百瀬は、その才能に惚れ込み、コロナ禍に閉塞する人々を変えるカリスマとして彼を売り出しはじめた。<Q>と名付けられたキュウは、SNSを通じ世界中で拡散され続ける。かつてない大規模ゲリラライブの準備が進む中、<Q>への殺害予告が届く――。
抗いようのない現実と、圧倒的な「いま」を描く。世界をアップロードさせる著者渾身の一作。
APPLE BOOKSのレビュー
『スワン』『おれたちの歌をうたえ』『爆弾』が連続して直木賞候補に選ばれた呉勝浩による長編ミステリー。清掃会社に勤める町谷亜八は、過去に傷害事件を起こし、執行猶予中の身。彼女の唯一の楽しみは、祖父が遺したアウディでアクアラインを疾走すること。最低限の暮らしからはみ出さないよう、一人で必死に生きていた亜八の元に義理の姉ロクから、弟のキュウを助けてほしいとの連絡が入る。亜八をハチと呼ぶロク、そして弟のキュウは、彼らの“父親”が続けざまに別れてはくっついた3人の妻の連れ子からなる疑似姉弟だ。かつてロクとハチはキュウを守るため、とある罪を犯していた。類まれな美貌とダンスの才能を持つキュウに近づく怪しい人物たち。キュウを守るため、ハチは再び平穏な日常からはみ出していく。ハチが犯した過去の事件、一癖も二癖もある登場人物たち、そしてキュウことQが目指す美の到達点。読者がいくつもの謎を追ってページをめくるたび、リアルと虚構のはざまに迷い込むような力強い筆致に圧倒される。社会への反抗、自己解放、恋愛、そしてコロナ禍の閉塞感といった要素を巧みに取り入れながら物語は加速度的に濃度を増す。その衝撃に脳が揺さぶられ、放心する。