お伽草紙
Descripción editorial
「お伽草紙(おとぎざうし)」
太宰治(だざい おさむ、1909(明治42)年〜1948(昭和23)年)の書いた短編小説集です。
4つの昔話、こぶ取りじいさん、浦島太郎、かちかち山、舌切り雀、を独自に解釈しました。
ポピュラーな昔話が、随分ひねくれた話になっています。
善人のいじわる爺さん、
毒舌の亀、
潔癖な少女の兎、
すれ違い夫婦のお爺さん。
また、前書きの通り、この短編集が書かれたのは、空襲続く避難生活の最中でした。
戦前の本は旧字旧仮名で、総ルビのものが多くありました。新聞も総ルビでした。
旧漢字が難しいのと、教育が追付かなかった両方によります。
ふりがなは編集者が付けており、間違いや不統一もありましたが、
誰でも難しい本を読め、読者を増やすのに大いに貢献しました。
それにならって、旧字旧仮名で総ルビ、縦書きの電子書籍にしました。
ルビの誤りには気を付けていますが、もしお気付きの際はお知らせください。
読みには揺らぎのあることもあります。
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「言(い)ふ事(こと)すべて氣(き)にいらん。」と龜(かめ)は本氣(ほんき)にふくれて、「腰(こし)かけてみるか、とは何事(なにごと)です。腰(こし)かけてみるのも、腰(こし)かけるのも、結果(けつくわ)に於(お)いては同(おな)じぢやないか。疑(うたが)ひながら、ためしに右(みぎ)へ曲(まが)るのも、信(しん)じて斷乎(だんこ)として右(みぎ)へ曲(まが)るのも、その運命(うんめい)は同(おな)じ事(こと)です。どつちにしたつて引返(ひきかへ)すことは出來(でき)ないんだ。試(こゝろ)みたとたんに、あなたの運命(うんめい)がちやんときめられてしまふのだ。人生(じんせい)には試(こゝろ)みなんて、存在(そんざい)しないんだ。やつてみるのは、やつたのと同(おな)じだ。實(じつ)にあなたたちは、往生際(わうじやうぎは)が惡(わる)い。引返(ひきかへ)す事(こと)が出來(でき)るものだと思(おも)つてゐる。」
「わかつたよ、わかつたよ。それでは信(しん)じて乘(の)せてもらはう!」
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*目次*
├お伽草紙
│├前書き
│├瘤取り
│├浦島さん
│├カチ〳〵山
│└舌切雀
└底本などに関する情報