大学事始・日本の見えざる美
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Publisher Description
大学事始:蘭学から英学、ドイツ学へ
長く続いた鎖国。それでなまじ独自の国風文化ができたがゆえに、欧米の文化学問に対する憧憬と反発が拗れた。そもそも欧米と言っても、それはオランダか、イギリスか、ドイツか。藩閥政府の留学帰国組の利権が絡み、そこに正体不明の怪しげな外国人講師たちが割り込み、さらにはキャッチアップかジャポニズムかと殖産興業の方針がぶれて、結局、いずれも瓦解自滅し、ただ選良選別のための空虚なシステムだけができた。
日本の見えざる美
繰り返される外国文化の襲来流入で、恒常的に彷徨史観に立たざるをえない〈日本の美〉は、循環的な季節感や王朝感を持ちながらも、けっして元には戻れず、かといって過去に積み残した「残念」を切り捨てることもできない重層性を、光に伴う影として心の中で引き受けなければならなくなった。ここでは、カサネが、つねにズラシになってしまう。時を経てなお、重なったままで残っているものは、ありえない。この差延に、わかる者にしか、もうわかるまいという孤立の諦感、自分の幻想が私的なものでしかなく、さらには、自分自身もまたもはや幻想の側の「えうなき」漂泊者であるという、あわれの侘び寂びが胸を締めつけることになる。