天国大魔境(1‪)‬

APPLE BOOKSのレビュー

東京の下町を舞台にしたコメディ「それでも町は廻っている」で、2013年に第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した石黒正数の「天国大魔境(1)」。高い壁で外界と遮断された施設と、壁の外の荒廃した日本という2つの世界で物語が展開する、SF冒険譚。壁の内側で平和に暮らす子供たちと、外側でサバイバル生活を送る、心に静かな炎を秘めるキリコ、特殊な能力を持つマルなど、個性的なキャラクターを持った才気あふれる子供たちが、テンポのよいセリフ回しで生き生きと描かれていく。相反する2つの世界が織りなすドラマと、周到に張り巡らせられたいくつもの伏線により、読み進めるほどに次の展開への期待が膨らむ。物語を引き立てる町の殺伐さや人を襲う怪鳥の不気味さなどを、迫力を持って描き出す筆力の高さも魅力。なぜ子供たちは施設で集団生活を送っているのか、壁の内側と外側の世界は交わるのかなど、今後の展開に胸が高鳴る第1巻。