くせものの譜
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4.6 • 5件の評価
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- ¥1,500
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発行者による作品情報
主家が次々滅亡する縁起の悪さから「厄勘兵衛」と嫌われた男・御宿勘兵衛。結城秀康という理想の主の下、野本右近、久世但馬、本多富正、塙団右衛門ら、癖も実力もある朋輩たちと、理想の家造りを目指すが……。英雄に憧れた男たちの戦国最後の戦―大坂の陣。
APPLE BOOKSのレビュー
戦国時代の知る人ぞ知る武将を描き、時代小説好きの注目を集めている簑輪諒。「うつろ屋軍師」、「殿さま狸」に続き、3作目となる本作で活躍するのは、武田家の家臣、御宿勘兵衛。武田信玄の孫という風聞があったとも言われる人物で、物語ではこの風聞が彼の人生を動かしていくことになる。秘密めいた出自をもち、幼少の頃から戦一筋で、刀槍術、弓馬術はもとより戦術でも研鑽を積んだ偉丈夫と聞けば、戦国好きにはたまらないキャラクターだろう。20歳前という若さで知将と謳われた真田昌幸との対面を果たしたのち、己の未熟さに気がつき戦乱の世を泳ぐように渡り始めるのだが、敵と味方が目まぐるしく入れ替わる中、さまざまな戦や謀略の陰に勘兵衛が登場するたびに、「ここにも勘兵衛あり」と思わず膝を打つような高揚感がある。クライマックスは家康と秀吉が大坂城で戦う、いわゆる大阪冬の陣。壮年になった勘兵衛のくせものぶりに戦国時代のダイナミズムが感じられ、心を打たれる。