



やめるときも、すこやかなるときも
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4.4 • 34件の評価
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- ¥770
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発行者による作品情報
大切な人の死を忘れられない男と、恋の仕方を知らない女。欠けた心を抱えたふたりが出会い、お互いを知らないまま、少しずつ歩み寄っていく道のり。変化し続ける人生のなかで、他者と共に生きることの温かみに触れる長編小説。
APPLE BOOKSのレビュー
人間のダークな一面や性愛を正面から描くことに定評のある直木賞作家、窪美澄による純愛物語。気ままな独身生活を送る家具職人の壱晴は、酒に酔い目覚めると、自宅のベッドで見知らぬ女と寝ていることに気付く。記憶のない壱晴は、面倒のないようにと、女の顔も見ずに仕事に出かけるが、ある日個展用のパンフレット作りのために呼んだ制作会社の桜子と出会い、見知らぬ女の正体を知ることになる。過去にとらわれ、女性とは割り切った関係しか築けない壱晴と、家庭の事情から仕事に追われ、恋もおしゃれもろくに知らないまま、32歳になった桜子。行き詰まった現状から抜け出そうとあがく対照的な2人は、お互いをよく知らないまま、純粋な好意だけではない恋愛を始めていく。人と付き合うこと、そしてその先にある結婚は、少なからず相手の人生を背負うことでもある。お互いに複雑な事情を抱えた壱晴と桜子は、文字通り「やめるときも、すこやかなるときも」共にいられるのだろうか。いわゆる適齢期とされる男女が抱える、結婚や家族に対しての赤裸々な思いに共感したり、ツッコミを入れたりしながら、登場人物みんなの幸せを、そして自分の幸せも応援したくなるような作品だ。