アガサ・クリスティー自伝(上)
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- ¥1,300
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発行者による作品情報
一八九〇年九月十五日、英国の海辺の避暑地トーキイで、ひとりの少女が誕生した。アガサと名付けられた彼女は空想好きで内気な少女に成長する。思い出深い子供時代。音楽家を志した少女時代。電撃的な出会いと結婚。世界大戦。そして名探偵ポアロの誕生……興味深いエピソードで綴る傑作自伝。
APPLE BOOKSのレビュー
名探偵ポワロやミス・マープルといったキャラクターを生み出し、今なおジャンルを超えて愛され続ける世界的な推理小説家、アガサ・クリスティーが自らの生涯と時代を振り返る稀有な自伝。59歳の彼女が15年という歳月をかけて書き記した今作品の上巻では、裕福な家庭で貴族のような暮らしをしていた幼児期から、第一次世界大戦中の青年期までが描かれている。薬剤師の経験を生かして、毒薬を小説の犯罪手段に取り入れることを思いついた時の話など、ミステリーの女王が産声を上げた瞬間のエピソードを味わうことができる。特筆すべきは、遠い過去の記憶を、現在の出来事のように臨場感あふれる筆致で写し出す、その優れた描写力。当時と現代との女性の価値観の違いがありありと現れる幼少期の思い出など、ヴィクトリア朝末期の文化や様式に知的好奇心をくすぐられる。従来の戦争とはあり方の異なった世界大戦の様子、病院への奉仕活動といった戦時中の体験談など、著者の作風に影響を与えた時代背景が盛り込まれ、ミステリー界の巨人をより深く知るための一助になる作品。