オイディプス症候群
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
中央アフリカで発見された謎の病、アブバジ病に罹患したパストゥール研究所の学者フランソワ。病床の彼から預かった資料を、ナディア・モガールと矢吹駆は、フランソワの師・マドック博士に届けるため、アテネへと旅立った。しかし博士は、エーゲ海の孤島・ミノタウロス島に渡っていた。彼を追うナディアと駆。島の館・ダイダロス館には、二人を含む十人の男女が集まったが、嵐で島は孤立、ギリシア神話をなぞるように装飾された客たちの死体が次々に発見される。奇怪な連続殺人の真相は? シリーズ中白眉といわれる、記念碑的傑作本格ミステリ。/解説=飯城勇三
APPLE BOOKSのレビュー
ギリシャ悲劇の主人公の名を冠した本作は、孤島の館を舞台にしたクローズドサークル。思想家、哲学者としても活動するミステリー作家、笠井潔による1979年のデビュー作『バイバイ、エンジェル』から始まり代表作となった矢吹駆シリーズは、完璧な謎解きで楽しませながら、哲学的問いかけと徹底的な議論の合わせ技で根強いファンを持つ。今作はアガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』で有名な定番の設定だが、謎が解かれた先に見える光景は矢吹シリーズならではの奥深さだ。1978年、パリ。免疫機能が低下する謎のオイディプス症候群で瀕死状態の友に依頼され、矢吹と相棒的存在のナディアは書類を届けるために空港へ向かう。直前に変更された行き先は、ギリシャの海に浮かぶミノタウロス島。指定された館には共通点などなさそうに見える男女が次々と集まり、やがて連続殺人事件が起こる。哲学論争にギリシャ悲劇の知識も盛り込まれたミステリーは、答えを拙速に求める時流とは正反対。じっくりと思考する楽しみを与えてくれるだろう。