ジャグラー
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- ¥610
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発行者による作品情報
霊界の現世への侵出を防ぐため、緩衝地帯に現れた我らがヒーロー。“だれなんだ? アホなのか? 変人かい?”彼の名は、人呼んで、ジャグラー。近未来、コンピュータ・チップの処理速度は量子効果障害によって技術的な限界を迎えていた。だが量子効果が霊的現象であることが解明され、テクノロジーがついにユークリッド的非存在“霊”を演算により証明してしまう。来るべき、約束の地であるはずの霊界はアメリカン・コミックそのままの、俗悪なる原色の世界だった! バッド・ポップなSFアクションの傑作。
APPLE BOOKSのレビュー
アメリカンコミックの世界観と、仮想現実というテーマを組み合わせた奇抜なSFアクション小説「ジャグラー」。著者は星雲賞受賞作「神狩り」で1974年に作家デビューした、日本SF大賞や本格ミステリ大賞などの受賞歴もある山田正紀。舞台は2043年、トウキョウ。量子制御コンピュータの発達により、霊界の存在が証明されてしまった世界。霊界を支配しようとする一癖も二癖もある敵にヒーロー、ジャグラーが立ち向かう。「まず最初に死んだのがスパイダーマンだった。」ー 冒頭から繰り出されるダイナミックなフローと、極彩色で現実化された死後の世界という奇想天外な舞台設定が本作の魅力。死を記述する生命言語ランガーや死を体験できるゲームといった難解で哲学的なモチーフが次々と表れるが、スーパーマンのようなジャグラーが悪事を企てる5人の使途と対決するという物語は、バトルマンガのように興奮に満ちている。フロッピー、ファジーなど本書が発表された当時(1991年)を思わせる言葉もたびたび登場するが、現実化する仮想世界に対する恐怖や均質化する社会、といったテーマは今の時代にも通ずる。死とは何かという壮大なテーマに思いを馳せながら、ときに奇才と呼ばれる著者の想像力の爆発が楽しめる一級の娯楽作品。