スティル・ライフ
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- ¥330
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発行者による作品情報
しなやかな感性と端正な成熟が生み出した唯一無二の世界。
生きることにほんの少し惑うとき、
何度でもひもときたい永遠の青春小説。芥川賞受賞作品。
APPLE BOOKSのレビュー
第98回芥川賞受賞作であり、池澤夏樹の原点的作品「スティル・ライフ」。主人公の"ぼく"と、謎の多い男・佐々井の奇妙で短い同居生活を描いた本作は、池澤作品特有の叙情性豊かな表現が際立つ哲学的小説。ミステリアスな問い掛けから幕を開ける冒頭パートに始まり、先を読み進めていくうちに、読者自身が自分の感性で言葉や会話の意味を考えて読み砕くという楽しさに気付いていく。彼が描く人物の思考やその日常の描写の繊細さは、まるで詩を読んでいるかのよう。しかし佐々井がとある計画を持ちかけるところから物語はサスペンス小説のような展開を見せ始める。彼の真の姿が徐々に明らかになるにつれ、大きな力が物語の全体をけん引していく。淡々とした文体だが、しなやかでみずみずしい感性と静かな余韻を残す力強さを備えている。