テティスの逆鱗
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3.2 • 19件の評価
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- ¥630
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発行者による作品情報
華やかな美貌で売る女優、出産前の身体に戻りたい主婦、完璧な男との結婚をねらうキャバ嬢、そして、独自の美を求め続ける資産家令嬢。美容整形に通い詰める4人は、どんどんエスカレートし、やがて「禁断の領域」にまで達する――。終わりなき欲望を解き放った女たちが踏み込んだ、美容整形という天国と地獄。その戦慄の風景、女の心模様に震撼する、美と恐怖の異色作!
APPLE BOOKSのレビュー
直木賞を受賞した『肩ごしの恋人』など、恋愛小説で知られる唯川恵が手掛けた美醜を巡る異色作。40歳をとうに過ぎながら、いまだ美貌だけを頼りに生きる女優の條子。子どもを産んだことで失われた、過去の自分を取り戻したいと焦る会社員の多岐江。キャバクラで働きながら、若くてきれいでもてるうちに最高の男を見つけて結婚すると決めている莉子。他人からどんなに奇異の目で見られようが、普通の人間とは違う独自の美を追い求める涼香。長年抱えていたコンプレックスが整形で簡単になかったことにできる、ということをひとたび知ってしまえば、最初に感じていたためらいは消え失せ、欲はとめどなくあふれていくばかり。美容外科医である晶世の元に足しげく通う4人の女たちのすさまじい要求と上がり続けていく美のハードルは、やがて常軌を逸し禁忌に触れていく。女たちの欲望が飽和し、爆発するまでの恐ろしい過程をまざまざと見せつけられ、ありえない、恐ろしいと感じながらも、コンプレックスのありようという点ではどこか容認してしまう自分を発見する。多くの女性が持つであろう美への願望とその執念、そしてどんどんカジュアル化する美容整形の怖さを余すことなく描いた怪作だ。