



ヒルビリー・エレジー~アメリカの繁栄から取り残された白人たち~
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4.6 • 19件の評価
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- ¥1,400
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発行者による作品情報
2016年、無名の31歳の弁護士が書いた回想録がアメリカでミリオンセラーとなった。「ラストベルト(錆ついた工業地帯)」と呼ばれる、かつて鉄鋼業などで栄えた地域の荒廃、自らの家族も含めた貧しい白人労働者階級の独特の文化、悲惨な日常を描いた本書は、トランプ現象を読み解く一冊として世界中でセンセーションを巻き起こす。2020年、ロン・ハワード監督によって映画化もされた歴史的名著が、文庫で登場!
APPLE BOOKSのレビュー
俗に“ラストベルト”と呼ばれる、アメリカの寂れた工業地帯で生まれ育ったJ・D・ヴァンスの自伝的一作。かつてはアメリカの繁栄を支えながらも、グローバリズムの時代に取り残されて荒廃した白人労働者の街。そんな街で薬物依存症の母から離れ、祖父母に育てられたヴァンスは、苦学してロースクールに進み、見事に立身出世を遂げる。しかしそれは、一昔前のアメリカンドリームのような希望に満ちた物語ではない。社会階層を上に移行した彼が体験する文化的、経済的、政治的コンフリクトの数々は、もはや修復不可能なレベルまで国が引き裂かれた状態にあることを、そして既に夢は潰(つい)えていることを明らかにしていくからだ。刊行当時は無名だった筆者の回想録が大ベストセラーとなったのは、本作が分断されたアメリカの姿を克明に投影していたからだろう。エリートたちから田舎者(ヒルビリー)とさげすまれた人々の投票行動が、2016年大統領選でトランプ当選の大きな原動力となったことから、本作は“トランプのアメリカ”を理解する上で必携の一冊として世界中で読まれ、研究されるに至っている。ヴァンスはその後、政治の世界に転身。2025年発足の第2次トランプ政権で副大統領に就任した。