ボラード病
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- ¥560
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発行者による作品情報
日本中を震撼させた傑作がついに文庫化!
B県海塚市は、過去の厄災から蘇りつつある復興の町。
皆が心を一つに強く結び合って「海塚讃歌」を歌い、新鮮な地元の魚や野菜を食べ、
港の清掃活動に励み、同級生が次々と死んでいく――。
集団心理の歪み、蔓延る同調圧力の不穏さを、少女の回想でつづり、
読む者を震撼させたディストピア小説の傑作。
(解説・いとうせいこう)
「誰も触れたがらないきわどいポイントを錐で揉みこむように突いてみせた、とびきりスキャンダラスな作品」(松浦寿輝)
「この作品に描かれた社会が、近未来の日本に現れないことを願っている」(佐藤優)
「世界をありのままに感じることがいかに困難であるかを描きだした魂の小説」(若松英輔)
APPLE BOOKSのレビュー
ときに目を背けたくなるような激しい筆致とストーリー展開で、真実を鋭くえぐり出す作家、吉村萬壱による衝撃作「ボラード病」。震災の傷から復興しつつある町・海塚に住む少女と周囲の人間との交流を通して、何気ない日々に潜む違和感を淡々と書き綴っていく。タイトルに冠され、物語のキーワードとなる"ボラード病"の正体が最後まで明かされないなど、本書は寓話的な要素が強い。一方で、ふとしたきっかけから軋んでいく人間関係の描写は生々しく、集団における人々の振る舞い、同調圧力への恐怖が、より真に迫ってくる。冒頭で現れる微かな歪みは次第に大きくなっていき、町で孤立していく主人公の独白によってエピソードは破壊的なクライマックスを迎える。著者が投げ掛ける苦くも力強い問題提起は、日常の風景を一変させてしまうほどの余韻を残す。現実をも侵食する強いメッセージに心震える小説。