ミーツ・ザ・ワールド
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4.1 • 7件の評価
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- ¥760
発行者による作品情報
焼肉擬人化漫画をこよなく愛する腐女子の由嘉里。人生二度目の合コン帰り、酔い潰れていた夜の新宿歌舞伎町で、美しいキャバ嬢・ライと出会う。「私はこの世界から消えなきゃいけない」と語るライ。彼女と一緒に暮らすことになり、由嘉里の世界の新たな扉が開く……。推しへの愛と三次元の恋。世間の常識を軽やかに飛び越え、幸せを求める気持ちが向かう先は? 死にたいキャバ嬢×推したい腐女子――金原ひとみが描く恋愛の新境地。第35回柴田錬三郎賞受賞作!
APPLE BOOKSのレビュー
2004年に第130回芥川賞を受賞した『蛇にピアス』で衝撃的なデビューを果たした金原ひとみ。ヒリヒリした人間関係や背徳的な恋愛を描いてきた金原が『ミーツ・ザ・ワールド』で主人公にしたのは、恋愛未経験の銀行員の由嘉里。肉体的接触はハグと手をつなぐだけと、これまでの金原作品にはなかったプラトニックな愛情に注目してほしい。腐女子たる者こうあるべきと自分自身を枠にはめ、職場ではアニメオタクをひた隠して地味に働いてきた由嘉里。“理想的な女性の人生”を押し付ける母との関係にもがく彼女が、虚無的な人生観を持つキャバ嬢のライに歌舞伎町で拾われたことで、世界が大きく変わっていく。改行なしで怒濤(どとう)のように活字が連なる由嘉里のモノローグは、いつだって自信がなくておどおどする彼女を表現しているようだ。そんな彼女が歌舞伎町に集う個性的な人々と触れ合っていく中で、固定概念が吹き飛ぶ姿にワクワクする。何が好きで何をして生きていきたいのか。世界と出会った由嘉里の成長がまぶしい。