一橋桐子(76)の犯罪日記
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4.0 • 6件の評価
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発行者による作品情報
老親の面倒を見てきた桐子は、気づけば結婚せず、76歳になっていた。両親をおくり、年金と清掃のパートで細々と暮らしているが貯金はない。このままだと孤独死して人に迷惑をかけてしまう。絶望していたある日、テレビを見ていたら、高齢受刑者が刑務所で介護されている姿が目に飛び込んできた。これだ! 光明を見出した桐子は「長く刑務所に入っていられる犯罪」を模索し始める。(解説:永江朗)
APPLE BOOKSのレビュー
超高齢化社会を迎え、年金だけでは生活できない現実が重くのしかかる日本。ベストセラー『三千円の使いかた』で各世代のお金と人生の悩みを明るく、かつ切なく伝えた原田ひ香が、本作では究極の老後生活を紹介する。それは、ついのすみかを刑務所にすること。社会からはみ出した老人が、再犯を繰り返して外の世界と刑務所を往復する状況が実際にあるが、本作の主人公、76歳の一橋桐子は犯罪とは無縁。亡き両親のために介護離職し、共同生活していた親友も亡くしてしまった。今はわずかな年金と清掃のパート代が命綱で、全財産は数万円。切羽詰まった桐子が不安と孤独から逃げるために、ニセ札作りに闇金の勧誘、詐欺、誘拐と、刑務所入りを夢見て悪事に挑戦し、物語は荒唐無稽なブラックユーモアに。誠実な桐子が“ムショ活”したところで、成功するはずがない。結局は日々の小さな善行と、謙虚に他人と向き合う姿勢が身を助ける。老後は金より人の縁が大切といわれるが、「いやいや、どちらも大切に育まなきゃね」と人生を考え直したくなる。2022年には松坂慶子主演でテレビドラマ化された。