双頭の悪魔
江神シリーズ
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- ¥880
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発行者による作品情報
娘を連れ戻してほしいのです――山間の過疎地で孤立する芸術家のコミュニティ、木更村に入ったまま戻らないマリアを案じる有馬氏。要請に応えて英都大学推理小説研究会の面々は四国へ渡る。かたくなに干渉を拒む木更村住民の態度に業を煮やし、大雨を衝いて潜入を決行。接触に成功して目的を半ば達成したかに思えた矢先、架橋が落ちて木更村は陸の孤島と化す。芸術家たちと共に進退きわまった江神・マリア、夏森村に足止めされたアリスたち――双方が殺人事件に巻き込まれ、川の両側で真相究明が始まる。読者への挑戦が三度添えられた、犯人当て(フーダニット)の限界に挑む大作。妙なる本格ミステリの香気、有栖川有栖の真髄ここにあり。
APPLE BOOKSのレビュー
巧妙な舞台設定と謎解きに長けた有栖川有栖の「双頭の悪魔」。著者と同名の登場人物が所属する京都の大学の推理小説研究会が殺人事件に巻き込まれる、「月光ゲーム」「孤島パズル」に続くシリーズの3作目。豪雨のため孤立してしまった四国の山村で殺人事件が起き、彼らは事件の真っただ中にとらわれる。過疎地域にある芸術家が集まる閉鎖性の高い村とその村が生まれた理由、現在の状況などは、推理劇の面白さを高めるのに有効であり、舞台設定の妙を感じさせる。作中にはそれぞれの事件の犯人が誰かを問う著者からの挑戦状が挟み込まれ、真相にたどり着くための材料がすべて提供されているという、まさに正統派の犯人当てミステリー。何げない一言やささやかな情景描写に事件の真相に迫る鍵が隠された精密な推理劇は論理的で読み応えたっぷり。犯人探しの面白さを存分に楽しめる長編推理小説。