小さな会社の後継ぎ革命
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発行者による作品情報
はじめに「浜田の家の息子たちは、なんで後を継がないんだ」水俣の実家に帰るたび、小さな町のどこかから、親戚の誰かから、幾度となくこんな言葉が投げつけられてきた。おそらく、日本中の二代目、三代目の息子たちが、同じような質問にさらされていることだろう。祖父の代から続いている、水俣に本拠を置く「浜田建設」の三代目。小さな町の小さな業界の中で、若い日の私は、常に周囲からそのように見られてきた。私自身、家業継承は、いつも頭のどこかにひっかかっていた。自分に建設業は向いていない。それでも、親父の後を継ぐべきなのだろうか。あるいは、何かもっと新しい方法があるのだろうか。その私は今、通算三千八百件の講演会をこなしたセミナー講師として、全国を走り回る生活をしている。自分のやりたいことを求めて試行錯誤を繰り返した末、本当に適性にかなった天職に出合い、これを全うできる幸せを噛みしめている。一方、私の八歳年下の弟・裕史は、現在、CGを使った建築設計事務所、有限会社モードフロンティアを立ち上げ、デジタルコンテンツの新しい可能性を追求している。建設に関わる仕事でありながら、その職分は、家業と大きく隔たる異業種である。そして、本体の浜田建設の看板は、父が一人で細々と守っている。この状況を見て、周りの人々はみな、冒頭のような疑問、ならびに批判を投げかけるのである。けれども、ちょっと待って欲しい。確かに浜田家の息子たちは、「浜田建設」の業態と看板は継がなかった。けれども、親から子への事業継承で、いちばん大切な部分はしっかりと受け継いでいるつもりだ。今、日本の中小企業が直面する様々な問題の中で、もっとも深刻なのは、後継者に関するものだと言われている。展望の見えない家業に、まったく魅力を感じない。だから継ぎたくない。若い経営者が育たないため、業界自体から活気が失われる。この悪循環が、産業の空洞化を招く要因の一つであると目されている。私たち浜田家の親子が、三者三様に紆余曲折を経て、たどり着いた結論は、このような深刻な状況に、風穴を空けるヒントになるかもしれない。後継問題で悩む経営者の方、後継ぎを期待される二代目・三代目の方に、ぜひこの本を手にとっていただきたい。