新装版 8の殺人
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2.4 • 5件の評価
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- ¥800
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発行者による作品情報
大胆なトリックで本格ミステリーファンをうならせた傑作長編。建物の内部にある中庭が渡り廊下で結ばれた、通称“8の字屋敷”で起きたボウガンによる連続殺人。最初の犠牲者は鍵を掛け人が寝ていた部屋から撃たれ、2人目は密室のドアの内側に磔に。速水警部補が推理マニアの弟、妹とともにその難解な謎に挑戦する、デビュー作にして傑作の誉れ高い長編ミステリー。(講談社文庫)
APPLE BOOKSのレビュー
速水警部補と推理マニアの弟と妹が謎に挑むユーモアミステリー、速水3兄妹シリーズの第1作。1989年初刊。後年、叙述トリックの名作でサイコサスペンスの『殺戮にいたる病』やゲームソフト『かまいたちの夜』のシナリオを手掛けた我孫子武丸のデビュー作。中庭が渡り廊下で結ばれ、上から見ると8の形をした通称“8の字屋敷”でボウガンによる殺人事件が発生した。被害者は蜂須賀建設社長の長男、菊一郎。目撃者によるとボウガンが放たれたのは使用人夫婦の息子の矢野雄作の部屋。寝ていたと主張する雄作だが、中から鍵が掛けられており、誰も入ることはできない。速水警部補は雄作の無実を直感するが、今度は密室のドアにボウガンで磔(はりつけ)にされた第二の殺人が起きる…。『三つの棺』の密室講義が登場するなど、密室の巨匠といわれた推理作家ジョン・ディクスン・カーに作者が傾倒しているのは明らかで、速水警部補と部下の木下刑事による体を張ったドタバタコメディにもカーの影響が色濃い。さらに作者注でミステリーの豆知識を読者に教える趣向も楽しく、ミステリーマニアの機知に富んでいる。ユーモラスな筆致と人を食ったトリックが矛盾することなく存在する、見事な長編。