最終便に間に合えば
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3.4 • 10件の評価
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- ¥470
発行者による作品情報
OLから造花クリエーターに転進した美登里は、旅行先の札幌で七年前に別れた男と再会する。身勝手と独占の欲望にさいなまれた苦々しい思い出は、いつしか甘美な記憶にとってかわり、空港へと向かうタクシーの中で美登里を誘ってくる男に、彼女は感情の押さえがたい力をおぼえるようになるが……。大人の情事を冷めた目で捉えた表題作に、古都を舞台に年下の男との甘美な恋愛を描いた「京都まで」の直木賞受賞二作品ほかを収録する充実の短篇集。
APPLE BOOKSのレビュー
第94回(1985年下半期)直木賞受賞作。コピーライターとして活躍し、女性の本音をコミカルにつづった初のエッセイ『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の大ヒットで時代の花形となった林真理子。その後、現代を生きる女性を主人公にした小説を次々に発表し、『最終便に間に合えば』と『京都まで』が直木賞を受賞。2作でバブル前夜の東京、時代の最先端で働く女性たちの苦い恋を書き分けている。『最終便に間に合えば』で描かれるのは、男女間のヒリヒリした駆け引き。7年前、だめ男の長原と別れた美登里。注目の造花デザイナーとして訪れた札幌で、気まぐれから長原と再会してみる。都合のいい女だった過去は美登里にとって忘れたい過去のはずだが、あの時と同じ甘いささやきに体が火照り出す。変わらない男と変わり続ける女のマウンティング合戦に苦笑。『京都まで』は東京で活動するフリー編集者、久仁子の遠距離恋愛ストーリー。京都に暮らす年下の恋人とのデートに夢中だったが、仕事のトラブルでささくれだった久仁子の一言は、楽しいだけの薄っぺらな恋を砕く。発表当時と現在では恋愛観と結婚観は大きく変化したが、焦りと孤独は変わっていないようだ。受賞した2作の他、「エンジェルのペン」「てるてる坊主」「ワイン」を収録。