不機嫌な果実
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3.6 • 76件の評価
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- ¥670
発行者による作品情報
「……クローゼットの中から極上の下着を選び出した時から、麻也子の不倫は始まっているのである。レースや絹に触れながら、麻也子は超能力者のように、今夜ベッドの中で行なわれるだろうことを予想する」。結婚6年目、夫の拒絶にささやかな復讐心をおぼえたヒロインは慎重な冒険──昔の男と逢う──に踏みだす。男女の虚実を醒めた視線で描き、反響を呼んだ話題作。石田ゆり子(TVドラマ)、南果歩(映画)主演の映像化も大ヒットした恋愛譚の新機軸。
APPLE BOOKSのレビュー
1995年から96年にかけて週刊誌にて連載され、ドラマや映画化など当時の「不倫ブーム」の一端も担った伝説の作品。不倫をテーマにしているが、セックスレスという問題も今作の大きなキーワード。専業主婦の麻也子は32歳となって女盛りを迎えていたが、働き盛りである夫の航一からは夜の営みを拒否されていた。不当に扱われている屈辱で憤る麻也子は、男からの賞賛の視線を求め、昔の男と会うというちょっとした冒険を思いつく。男からの甘い言葉と渇望の眼差しに気を良くした麻也子は不倫へと踏み出すが、どこか自分ばかりが損しているという思いをぬぐえないでいた。やがて麻也子はもう一人の男と出会い恋に落ちるが、昔の男との関係も切れずにいた…。夫、昔の男、愛人と3人の男の間でふわふわと飛び回る麻也子の姿から罪悪感はほとんど感じられない。自分勝手な理屈を並べ、ずるく立ち回る麻也子の姿は痛々しく、生々しい。心に潜む欲望と悪徳をこれでもかと描き出した傑作。