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4.6 • 99件の評価
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- ¥1,000
発行者による作品情報
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!
APPLE BOOKSのレビュー
ドラマ化、映画化もされたミステリー逃亡劇。現実にも起こり得るさまざまな社会問題を取り上げながら、個々の物語がつながっていく一級のエンターテインメントとなっている。主人公は、18歳の時に殺人犯として死刑宣告を受けた少年。そんな彼が1年半後に拘置所を脱走し、偽名を使いながら職を転々とする。建設会社の現場作業員、旅館の住み込みバイト、ウェブライター、パン工場のアルバイトと新興宗教の信者、そしてグループホームの介護士。行く先々で彼と出会った人はそれぞれに問題を抱え、彼に関わったことで救われていく。そして、彼が脱獄した死刑囚であることに一様に驚く。主人公自身ではなく、出会った人々の視点から語られる彼の人物像により、少しずつ主人公の姿が浮かび上がっていく。なぜ彼は罪を犯したのか。本当に罪を犯したのか。映画やドラマに比べ、一つ一つのエピソードが丁寧に描かれ、1年以上にわたる逃亡劇に没入し、感情移入してしまう。ドラマや映画を先に観た人は、原作の結末にがくぜんとするだろうが、一方で深い余韻に浸りつつ、現実の事件にも思いをはせることになるだろう。