気がつけば、終着駅
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- ¥1,300
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発行者による作品情報
離婚を推奨した1960年代、簡単に離婚し別れる2020年。世の中が変われば、考えも変わる。初エッセイから55年。これでおしまい。96歳を迎えた佐藤愛子さん。『婦人公論』への登場も半世紀あまりにおよぶ。初登場の「クサンチッペ党宣言」「再婚自由化時代」から、最新の橋田壽賀子さんとの対談まで、エッセイ、インタビューを織り交ぜて、この世の変化を総ざらい。39歳から今日に至る波瀾万丈の人生を振り返る、選りすぐりの一冊。
APPLE BOOKSのレビュー
96歳で本作を出版した筆者が、タイトルの「終着駅」に自身の人生を重ねてみせたことは想像に難くない。大正時代に生まれ、激動の昭和、平成を女性の視点から描き続けてきた佐藤愛子の著作は枚挙にいとまがないが、特に身近な日常のあれこれをウィットとユーモアに満ちたまなざしで切り取るエッセイは、彼女のライフワークでもあった。初エッセイから55年、「これでおしまい」と自ら決めた本著もまたエッセイ集だが、新たに書き下ろした作品は収録されていない。本作は佐藤のエッセイストとしてのキャリアのダイジェスト、集大成として編集された作品だからだ。著者が40代、50代の頃に女性誌で連載していたエッセイをまとめた第1部と、70代から90代にかけて人生終盤の生き方を模索する第2部、さらに脚本家の橋田壽賀子と語り合った巻末対談などを含む本作は、戦後をしなやかに生きた一人の女性の記録であり、時々の世相を反映してつづられる、日本社会と日本人の記憶でもある。それは波瀾万丈の人生を生き抜き、今、その「おしまい」を悔いなく迎えようとしている90代の著者だからこそ立ちえた境地だろう。