水滸伝 一 曙光の章
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発行者による作品情報
十二世紀の中国、北宋末期。重税と暴政のために国は乱れ、民は困窮していた。その腐敗した政府を倒そうと、立ち上がった者たちがいた――。世直しへの強い志を胸に、漢(おとこ)たちは圧倒的な官軍に挑んでいく。地位を捨て、愛する者を失い、そして自らの命を懸けて闘う。彼らの熱き生きざまを刻む壮大な物語が、いま幕を開ける。第九回司馬遼太郎賞を受賞した世紀の傑作、待望の電子書籍版配信開始。
APPLE BOOKSのレビュー
北方謙三の「水滸伝 一 曙光の章」。ハードボイルド小説でも知られる著者が中国の古典文学「水滸伝」をもとに大胆に再構築し、ダイナミックな歴史小説に仕上げた。本作は全19冊にも及ぶ長大な物語の端緒となる一冊。北宋末期の中国で、賄賂などが横行し腐敗する政府を倒し、困窮する民を救うため、志ある男たちが国内各地で立ち上がる。いずれ革命の中心となる人物が次々に登場し、互いを尊重しながら連携を深めていくさまがときに熱く、ときに冷静な筆致で描かれていく。政府直轄である禁軍の武術師範代で抜群の槍術の腕を持つ林冲、同志を集めるため各地を訪ね歩く禿頭で巨躯の僧侶・魯智深、活動資金集めに活躍する商人の廬俊義など、だれもが個性豊か。その姿形や立ち居振る舞い、心情などの描写は端的で、的確に人物像を浮かび上がらせている。彼らがいかにして仲間を集め、力を溜めていくのか、強大な権力を手中にする政府高官らと闘う道筋にどんな苦難が待っているのか。小気味よい読後感が魅力的で、次の展開が大いに期待される序章。