



海狼伝
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4.0 • 1件の評価
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発行者による作品情報
【第97回(1987年)直木賞受賞作】
ときは戦国。海と船への憧れを抱いて対馬で育った少年笛太郎は、航海中、瀬戸内海を根城とする村上水軍の海賊衆に捕まり、その手下となって、やがて“海の狼”へと成長していく。日本の海賊の生態をいきいきと描いた、夢とロマンが香る海洋冒険時代小説の最高傑作。「海を舞台にした小説は外国には多い。海洋冒険小説という一つのジャンルが確立しているほどである。四面環海の日本にそれがないというのは、ふしぎな現象だ。(略)日本の海洋小説の一里塚を築けたとすれば、私としては本当にうれしい」(「著者のことば」より)
APPLE BOOKSのレビュー
第97回(1987年上半期)直木賞受賞作。作者が候補になること8回目でついに同賞を受賞した『海狼伝』は、戦国時代が舞台の海洋冒険小説であり、海賊となる宿命を負った若者の成長小説でもある。対馬で母と暮らす笛太郎は、風をよみ、舟を操ることが誰よりも得意。朝鮮帰りの海賊である宣略将軍の右腕、加兵衛に才を見込まれた笛太郎は、航海中に瀬戸内海を根城とする戦闘集団の村上海賊衆に捕らえられ、結果的に変わり者の小金吾の郎党となる。銭勘定のうまい小金吾は、いずれは黄金丸という名の千石船を造り、海賊大将の村上武吉と離れて遠い異国に行くことを夢見ているが、笛太郎の父、人見孫七郎もまた武吉の千石船で南海へ赴き、そのまま行方不明になっていた…。笛太郎の盟友となる南宋人の大男の雷三郎、宣略将軍の養女で武術の達人の麗花、船造りへの情熱を秘めた船大工の小矢太など、魅力的な脇役を縦横無尽に配し、海の戦闘場面では、その様子を迫力満点に活写して手に汗握らせる。人を殺して財を奪う海賊行為が善なのかと悩む等身大の主人公が、あらゆることから自由になり、海の狼へと変貌するラストまで、無類の面白さ。まさに一気読み必至の快作。