



濹東綺譚
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3.9 • 49件の評価
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発行者による作品情報
明治時代の日本の小説家永井荷風。『濹東綺譚』底本の「「※(「さんずい+(壥-土へん-厂)」、第3水準1-87-25)東綺譚」新潮文庫、新潮社」では「文学・評論」としてまとめられている。本書で登場するのは、「(第一~十)」「作後贅言」などが収録されている。
APPLE BOOKSのレビュー
明治、大正、昭和と三つの時代にわたり、小説、随筆、翻訳など多岐にわたる分野で活躍した永井荷風の代表作の一つ『濹東綺譚』。花柳界を舞台とした作品を多く残した荷風による、娼婦との恋愛物語だ。戦前から1958年の売春防止法施行まで隅田川の東岸に存在した私娼窟であり、幾つもの細い路地が入り組んだ複雑な作りから「ラビラント(迷宮)」と荷風が呼んだ玉の井を舞台に、老境に入った男と若い私娼の泡沫(ほうまつ)のような出会いと別れを描いている。主人公で小説家の大江匡は、玉の井近辺を散策中に突然の雨に降られる。傘を広げ、歩きかけた時、「檀那、そこまで入れてってよ」と女が傘の下に首を突っ込んでくる。女の働く銘酒屋まで送った大江は、雪子と名乗るその女の元へ次第に通うようになる。迷路のような街のそこかしこに掲げられた「ぬけられます」「オトメ街」などと書かれた灯。溝際に建つ、蚊のわめく家での逢瀬。私娼を扱いながらも決して下品でなく、その世界はあくまでも叙情的だ。「作後贅言」と題したあとがきのような章では、一転して銀座の街の話や、明治育ちの人間と大正育ちの「現代人」との対比などが描かれ、当時の風俗を知るよすがとしても興味深い。
カスタマーレビュー
三田のこうちゃん
、
昭和の闇の奥
懐かしい大正、昭和の闇が私の頭に浮かんでくる