藻屑蟹 1(第1回大藪春彦新人賞受賞作)
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3.9 • 47件の評価
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発行者による作品情報
選考委員、激賞! 62歳、住所不定、無職の大型新人、第1回大藪春彦新人賞を受賞し、鮮烈デビュー!
●今野敏 選評(抜粋)
内容の濃さで群を抜いていた。この短い作品の中で、登場人物の印象を変えてみせている。これはなかなかの筆力だ。迷いなく受賞作に推した。
●馳星周 選評(抜粋)
記念すべき第一回の受賞作がこのように完成度の高いものであることは、故大藪春彦氏も喜んでいるのではないだろうか。
●徳間書店文芸編集部編集長 選評(抜粋)
世に出さなければならないという使命感を抱くほど、作品力は群を抜いていました。
●受賞の言葉(抜粋)
書き続ければ報われると知った。たとえ将来、路上に帰らざるを得ないほど困窮しても、日銭仕事に執筆の時間を犠牲にするくらいなら、わたしは何の躊躇もなく路上に帰ります。その覚悟を受賞の言葉としたい。
●あらすじ
二十七歳で人生を諦めた男。彼は原発事故の模様をテレビで見ていた。これから何かが変わる??そう信じて。しかし待っていたのは何も変わらない毎日と、除染作業員、原発避難民たちが街に住み始めたことよる苛立ちだった。
六年後、彼は金を得るために、高校時代の友人・純也の伝手で除染作業員となる。しかし、それは純也のある計画のために利用されているだけだった……。
選考会で満場一致にて受賞にいたった第一回大藪春彦賞受賞作!
※受賞作のほか、選評および受賞の言葉を収録
本作品には続編があります! 「藻屑蟹」で検索してください。
APPLE BOOKSのレビュー
第1回大藪春彦新人賞受賞作となった赤松利市のデビュー作。放射能汚染と保証金問題を軸に社会の闇に深く切り込み、人間の業を赤裸々に描き出していく。パチンコ店に勤務する「俺」の住む町に、東日本大震災後、多額の補償費・補助金を受け取った原発避難民が流れ込んできた。金銭に飢える「俺」にとって、働かずに暮らす彼らの姿は自分の感情をかき乱し、苛立たせる存在であった。そこへ原発関係の工務店に勤める友人の純也から、伝説の原発作業員である高橋という老人を紹介される。原発避難民たちであふれ、変わってゆく町の環境の中で、人々の善悪が次第に入れ替わるさまを、ノンフィクションのようなストーリー仕立てと、純文学のような趣きで描写する。人間の欲や浅ましさ、陰の面をあぶり出しながら、物語は悲しくも滑稽な、衝撃のラストシーンへと向かっていく。
カスタマーレビュー
感想
原発避難民を悪し様に書く小説は、正直なところ好きではありません。
この小説に登場する人物の心理描写は理解出来ますし、原発避難民の中には現状を悪用している人もいるでしょうが、それは極一部だと思います。
ただ、そんな人達を小説で表現することは非常に大切であり、素晴らしいことだと思います。少数派の生きる世界を表現することが、小説の大きな役割の一つだと私は考えていますし、そこにこそ本当に大切なものがあると信じていますから。
第1回大藪春彦新人賞を受賞された当作品は、短文主体の律動性のある文体、無駄の無い描写、引き込まれる話の展開があり、受賞作にたる質の高い作品だと思います。
次の作品も読んでみたいです。
気楽に読めて読みやすい
テーマは重いが、主人公に共感を持ちながら読めた。大きなサプライズは無いが文体は良い。
なんか
よかった