赤泥棒
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4.7 • 6件の評価
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- ¥1,900
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発行者による作品情報
町田康さん推し!
言葉に幅があり、しかもそれが的確に使用されている。辛辣な個性とその周囲を無情に描いていてよい。
(文藝賞選評より)
現役慶応大学院生であり、漫画『踊るリスポーン』の著者・三ヶ嶋犬太朗が鮮烈の文芸デビュー!
「捨てられたものを拾うのは泥棒ではない」と嘯き、女装をして女子トイレに侵入し、捨てられた生理用ナプキンを盗む百枝菊人。女装がバレたら心の性別をたてに被害者ぶろうと思っていたところ、同じ学校の明石睦美に目撃される。彼女は百枝が自分と同じく、性別に違和感を抱いていると思い急速に接近してきた。無理解と偏見がマイノリティを利用し、共感と愛情が暴力を肯定する……。表題作「赤泥棒」に加え、文藝賞最終候補に選ばれた「青辛く笑えよ」、「普通」を唾棄する高校生が才能の塊と出会い自我を崩壊させる「寄食のダボハゼ」をおさめた短編集。
APPLE BOOKSのレビュー
誰かに認められようと自分の居場所探しにもがく、傷だらけの高校生たちの姿を容赦なく描いた『赤泥棒』。著者は現役の慶應大学院生であり、『踊るリスポーン』で知られるマンガ家、三ヶ嶋犬太朗名義としても活動している。女装して、女子トイレに忍び込んでは使用済みの生理用ナプキンを盗んでいく男子高校生と、男性としての体を持てなかったことに苦悩する女子高生とのいびつなコミュニケーションを描く「赤泥棒」、父親から激しい暴力を受けながら育った少年の愛を巡る「青辛く笑えよ」、人と同じことや普通であることを軽蔑する高校生が同世代の才能の塊と出会い、無情にも崩れ去る「奇食のダボハゼ」の3作を収めた短編集。まだ大人にはなりきれていない青い年齢の少年少女たちの、繊細でもろく、それでもとがろうとしている感情が渦巻き、暴力的にまで読者の心を握りつぶしてこようとする。この物語の主人公たちに歳近い作者だからこそ描ける高校生たちのリアルな物語なのかもしれない。