踊れ、愛より痛いほうへ
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4.5 • 2件の評価
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- ¥1,800
発行者による作品情報
初小説にして芥川賞候補作となった『いなくなくならなくならないで』に続く、向坂くじらの小説第二弾! 幼い頃から納得できないことがあると「割れる」アンノは、愛に疑念を抱いていて――
APPLE BOOKSのレビュー
第173回芥川賞にノミネートされた本作で、デビュー作『いなくなくならなくならないで』から2作連続の同賞ノミネートという快挙を果たした向坂くじら。詩人でもある向坂の独特の言語センスがさえ渡る本作は、一人の少女の鮮烈な自由と抵抗の物語だ。幼いころからバレエに打ち込んできたアンノ。彼女は強い怒りや憤りを感じると、頭が“割れ”てしまう性格の持ち主だった。ある日、母親が自分にバレエを続けさせるために2人目の子どもを諦めていたことを知ったアンノは、大きなショックを受ける。そして母親を拒絶するかのように、庭にテントを張って暮らし始めるのだが…。人を愛することは容易に束縛を生み、時として愛するもの以外を愛さないという排除にすらつながるものだ。そんな愛の理不尽を突き放そうとする彼女の生き方は、どこまでも不器用で刹那的。それは本作のタイトルにも象徴的だろう。しかし、心と身体の両方で痛みを感じながら踊り続ける、その“生きづらさ”こそがアンノの命を躍動させている。フラミンゴのように踊る少女の俊敏さ、何度も頭を割りながらも走り続ける彼女の人生のスピード感を体現した文章のリズムも見事。