遠い国からの殺人者
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4.3 • 4件の評価
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発行者による作品情報
「男の人が倒れている」110番通報の女の声には妙ななまりがあった──。マンションで死んでいたのは大学を中退した無職の若い男。姿をくらましたのは同居していた外国人ストリップ・ダンサー。彼女の身に一体何が起こったのか。彼女はなぜ真の素性を偽らなければならなかったのか。「じゃぱゆきさん」と呼ばれた外国人女性たち、経済大国ニッポンの底辺に生きる彼女たちの姿が、法廷での関係者の供述から次第に明らかにされていく。感動の直木賞受賞作品。
APPLE BOOKSのレビュー
第101回(1989年上半期)直木賞受賞作。日本に稼ぎに来た外国からの女性、通称「じゃぱゆきさん」の犯した罪を、社会問題を浮き彫りにしながら描いたリーガルミステリー。ある新宿のマンションで若い男が刺殺された。捜査線上に浮上したのは、ストリップ劇場で働いていた金髪の外国人の女。章ごとにさまざまな人間の視点が入れ替わりながら描写され、事件の詳細や彼女という人間が浮かび上がってくる。ショーを照らしていた照明の男、踊り子の先輩だった女、被害者の男の幼なじみ、警察、彼女をかくまっていたバーのオーナー…。なぜ、彼女は日本で働かなければならなかったのか。そしてなぜ、彼女は男を殺さなければならなかったのか。後半にかけては事件の背景、そして全貌が彼女の弁護士の奮闘によって、法廷で明らかになっていく。体温が感じられるような登場人物たちの描写は、クライム小説の人間ドラマ、そして心理劇としても読み応えがある。そして、日本における人種差別、性が商売として強制的に売られている暗たんとした闇、そしてじゃぱゆきさんたちの過酷な現実に深く踏み込んだ物語として、筆者の静かな怒りもにじみ出ているように感じる。