音楽は自由にする(新潮文庫)
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4.6 • 16件の評価
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発行者による作品情報
「あまり気が進まないけれど」と前置きしつつ、日本が誇る世界的音楽家は語り始めた。伝説的な編集者である父の記憶。ピアノとの出合い。幼稚園での初めての作曲。高校での学生運動。YMOの狂騒。『ラストエンペラー』での苦闘と栄光。同時多発テロの衝撃。そして辿りついた新しい音楽――。華やかさと裏腹の激動の半生と、いつも響いていた音楽への想いを自らの言葉で克明に語った初の自伝。
APPLE BOOKSのレビュー
2023年に惜しまれつつこの世を去った音楽家、坂本龍一。2009年に初版が発行された本作は初の自伝であり、類いまれなる音楽を生み出し続けた半生について、終わりなき表現の旅路について、自らの言葉で語った貴重な一作となっている。「本音を言えば、あまり気が進みません」と、冒頭で言い添えるあたりも坂本らしい。それでも語り始めたのは、自分はなぜ音楽家になったのか、いかにして坂本龍一は“坂本龍一”となったのかを、彼自身も理解したかったからだろう。坂本の記憶の反すうは、初めてピアノを弾き、初めて作曲した幼稚園の頃から始まる。高校生で直面した学生運動や、電子音楽との出会い。YELLOW MAGIC ORCHESTRAでの大ブレイクや、映画『ラストエンペラー』がもたらした世界的名声。そしてニューヨークで経験した2001年の同時多発テロ…、数々の激動の記憶で彩られた約半世紀が、“ありのままの音楽”と題された終章へと帰結するさまは感動的だ。音楽を選び、音楽に選ばれた希代のアーティストの輪郭が、余韻と共に浮かび上がってくる。本作の帰結は2009年。以降の坂本の人生は、2冊目の自伝『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』に詳しく記されている。