王とサーカス
太刀洗万智シリーズ
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- ¥950
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発行者による作品情報
2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、事前取材のためネパールに向かった。現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが、そんな彼女を嘲笑うかのように、彼女の前にはひとつの死体が転がり……。「この男は、わたしのために殺されたのか? あるいは――」疑問と苦悩の果てに太刀洗が辿り着いた痛切な真実とは? 『さよなら妖精』の出来事から十年の時を経て、太刀洗万智は異邦でふたたび、自らの人生を左右する大事件に遭遇する。/解説=末國善己
APPLE BOOKSのレビュー
青春ミステリーから本格推理小説まで幅広く手掛ける米澤穂信の「王とサーカス」。新人のフリージャーナリスト太刀洗万智は、ネパールの首都カトマンズでの滞在中に発生した王族殺害事件を取材しようと動き出したところ、別の殺人事件に巻き込まれていく。実際に王宮で起きた事件をからめた物語展開では、事件直後の混乱する街内の人々や、ラジオから流れる事件の報道などをつぶさに描写することで、ノンフィクションのような臨場感を演出。同時に、記者として奮闘する太刀洗の意気込みや戸惑いが、リアルな姿を持って立ち上がってくる。滞在先で知り合った少年や同じ宿に泊まる人々に適切な配慮を欠かさず、理知的な気性を見せる彼女だが、徐々に冷徹な一面や保身の思いを露わにしていく。こうした人間の普遍的な性質である、相反する二面性も本作のテーマの一つ。ジャーナリズムとその正義のあり方を作品全体で問い掛けつつ、切れ味の鋭い洞察力を発揮して真相究明に挑む本格推理小説。