白鷺立つ
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4.5 • 2件の評価
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発行者による作品情報
第32回松本清張賞受賞作異形の歴史小説
玉照院の師弟は“やんごとなき秘密”を抱えていた――
天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。
歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。
APPLE BOOKSのレビュー
恃照(じしょう)と戒閻(かいえん)。師弟でありながら互いに憎しみ合い、己の存在を証明するべく壮絶な荒行に挑む2人の仏僧の姿を描いた歴史小説。舞台は江戸後期の比叡山延暦寺。僧侶の恃照は、成功すれば大行満大阿闍梨(だいぎょうまんだいあじゃり)として歴史に名を残す千日回峰行に挑む。だが、険しい山道を700日巡った後の9日間、断食、断水、不眠、不臥(ふが)で真言を唱え続ける過酷な堂入りを終える寸前に力尽きてしまう。本来なら失敗した者は自ら命を絶つが、叡山は「半行満」なる新たな呼称を与え、公にはできぬ出自を持つ恃照の死を許さない。その恃照の下に弟子として現れた戒閻もまた、同じ出自。同じわだちを踏ませぬ叡山の意向に従わず、千日回峰行に執念を燃やす戒閻は、生き恥をさらす恃照を公然とさげすみ、2人は激しく対立する…。恃照が背負う屈辱や葛藤は、戒閻の野心や反発と交差するが、正反対でありながら鏡写しのような両者は、共に出自を明かせぬ日陰の身。だからこそ千日回峰行を完遂し、歴史に名を刻みたいのだ。周囲の思惑に翻弄(ほんろう)され、運命にあらがう師弟が「生きるとは何か」という問いを読者に突きつける重厚な人間ドラマは、歴史小説の枠を超えている。住田祐(すみださち)の鮮烈なデビュー作。