カフェーの帰り道
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4.0 • 1件の評価
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- ¥1,800
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発行者による作品情報
東京・上野の片隅にある、あまり流行っていない「カフェー西行」。食堂や喫茶も兼ねた近隣住民の憩いの場には、客をもてなす個性豊かな女給がいた。竹久夢二風の化粧で注目を集めるタイ子、小説修業が上手くいかず焦るセイ、嘘つきだが面倒見のいい美登里を、大胆な嘘で驚かせる年上の新米・園子。彼女たちは「西行」で朗らかに働き、それぞれの道を見つけて去って行ったが……。大正から昭和にかけ、女給として働いた“百年前のわたしたちの物語”。/【目次】稲子のカフェー/嘘つき美登里/出戻りセイ/タイ子の昔/幾子のお土産
APPLE BOOKSのレビュー
東京の上野にある商売っ気のないカフェー、通称「カフェー西行」を舞台に、大正から昭和の時代を生きた女性たちの人生をつづる連作短編集。昭和初期、カフェーの“女給”は女性たちの憧れの花形職業だったが、繁華街から外れた寂れたカフェー西行には、どこか訳ありの女性たちが集っている。文字が読めないタイ子、すぐうそをつく美登里、出戻りのセイ。彼女たちと店に集う客が織りなす日常は、地味ながらも人情味にあふれ、何げない瞬間の中に小さなドラマが息づいている。やがて時代は戦争の影を濃くし、女性たちは戦地へ赴く家族や恋人を思いながら日々を過ごすようになるが、カフェーを起点に出会った人々の人生もゆるやかに交錯していく。昭和初期のカフェー文化と女性たちの生き方を鮮やかに映し出す叙情的な物語であり、女性たちの目を通して時代の暗い影を静かに浮かび上がらせる戦争小説ともいえる。作者は2023年刊行の『襷がけの二人』に続き、本作でも直木賞候補入りを果たした。