トラ猫とタバコ屋のおばあちゃん
-
- ¥950
-
- ¥950
発行者による作品情報
最期に虎徹(おまえ)と逢えて、本当によかった──温かくも切ない〝猫〟と〝おばあちゃん〟の物語。
東京の下町にひっそりと暮らす、迷い猫だったサバトラ〝虎鉄〟と孤独なおばあちゃん〝タキ〟……。
《おふたりさま》は昔ながらのタバコ屋さんをしながら、互いに助け合って生きている。
不思議と通じ合う会話──いつまでも変わってほしくない日常が、ここにある。
『猫なんかよんでもこない』が映画化され話題の著者による最新作。
タキばあちゃんと虎鉄はいつも一緒。お店番も、朝昼晩の食事も、コーヒータイムも、お昼寝も、裏庭での洗濯の時も……片時も離れることはない。そして、いつも話しかけるのはタキばあちゃん。だから、虎鉄もばあちゃんの機嫌や体調に合わせてゆっくりと話を聞く。そんな時間が流れている。
店横のベンチにはいろいろな人が腰を下ろす。俳優という夢を抱えて上京してきた劇団員は、人生の岐路に立たされてタバコを燻らす。近所で独り暮らしをする独身女性は、仕事帰りに必ず一服。タキばあちゃんは、そんな彼らを見ていないようふりをして静かに声をかけ、コーヒーに誘う……。
タキばあちゃんのタバコ屋は、ありそうで、なさそうな心和む場所。ビル群の谷間で時が止まったような場所。年寄りと猫が静かに暮らす場所……。それは、とても心地の良い場所でありながら、消えてなくなるまで「大切な場所」だと気づけなかった都会の一角。
ふたり(一人と一匹)の暮らしを中心に、様々な人間模様を通して、虎鉄がタキばあちゃんの最期を看取るまでを描いた心に沁みるコミック作品。
APPLE BOOKSのレビュー
東京の下町でタバコ屋を営むタキばあと、その愛猫・虎鉄のほのぼのとした日常を柔らかいタッチで描き出した人気マンガ「トラ猫とタバコ屋のばあちゃん」。作者は、元プロボクサーという異色の経歴を持つマンガ家・杉作。描く実写映画化された「猫なんかよんでもこない。」をはじめ、猫や犬などの動物を題材にさまざまな作品を手掛けてきた。本作は、昔ながらの商店街、縁側でのひなたぼっこ、銭湯、夏祭り、お月見など、物語に登場する風景や出来事が郷愁を感じさせ、温かい気持ちにさせてくれる。とりわけ胸に響くのは人と人が互いに助け合う、いたわりや思いやりの心。タキばあと虎鉄、そしてご近所さんとの触れ合いが、人が生きていく上で本当に大切なものを読む者に気づかせてくれる。連載時には描かれなかった書き下ろし最終章も収録。登場人物たちのささやかな暮らしと、避けられない別れの時を丁寧に綴った物語の読後は、周囲を取り巻くいつもの風景がとても愛おしく感じられるはず。