井田由美で聴く「下田の女」 ラジオ日本聴く図書室シリーズVol.3
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発行者による作品情報
第二弾「日本国憲法」に続く、第三弾は、中島敦の「下田の女」。 『女だって別に一つ型に鋳込んで作られたものじゃあないんですもの』・・・熟年でないと書けないであろう、この科白、女という生き物の描写・・・しかしながら中島がこの「下田の女」を書き上げたのはなんと高校時代なのだ。 若いのに冴え渡る人間観察の眼。実は中島は15歳で三人目の母親を迎えている。父親が転勤で転々とし、そして母が変わっていった。父に対する不審感と血のつながらない母=女という生き物の見方・・・この作品の根底に流れるものは、まさにそこである。この作品を書いた頃、中島は喘息を患う。そしてそれが故で、やがて若くしてその幕をひくことになるのだった。作品に登場する、下田に静養にきている学生さんというのはまさに中島本人の投影にほかならない。 格調の高い文章で「芥川龍之介の再来」とまで言われた中島敦だったが、33歳という若さで亡くなり、残した作品は多くはない。いくつもの顔を持つ下田の女、女のサガの隅々まで、井田由美の声が描きあげた。(C)ラジオ日本